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整形外科とは?
ORTHOPEDICS
整形外科は、主に四肢および脊椎疾患や外傷を中心に、骨、関節、筋肉、靱帯などを扱っています。脊椎疾患(腰痛、肩こり、首の痛み、背中の痛み)や外傷(けが)、骨折や骨の痛み、関節痛、関節の腫れ、筋肉痛、捻挫、しびれなどは、治療に適した時期がありますので、その時期を逃さないように診察を受けましょう。
整形外科
TREATMENT
整形外科での治療
打撲、捻挫
捻挫で最も多い関節は足関節で、つまずいて足首を捻り、靭帯を損傷したものを足関節捻挫といいます。局所冷却と2週間のテーピング固定だけで治ることが殆どです。冷却にはケーキなどに付いてくる保冷剤が便利です。捻挫治療の基本はRICEと覚えると良いでしょう(rest安静、iceing冷却、compression圧迫固定、 elevation患肢挙上)。
肉離れは「ふくらはぎ」の筋肉に良く起こり、ボールが当たったような衝撃を感じます。局所冷却と3週間の局所安静を行います。重症例やアスリートを除いて、リハビリや筋トレは不要です。
骨折、脱臼
当院では、殆どの骨折をギプスではなくシーネで治療しています(本ページ上方の写真参照)。シーネはギプスを半分にしたもので、局所を観察でき、上手にすれば固定力はギプスと変わりません。一定の固定期間を過ぎれば、自分で外して入浴することも可能です。橈骨下端骨折(手首の骨折)の場合、当院でのシーネ固定は3週間と短いですが、成績は良好です。
関節痛
関節痛で最も多いのは、変形性膝関節症による膝関節痛で、肥満や加齢による軟骨の摩耗が原因です。治療はヒアルロン酸の注射、減量などです。
膝は外傷も受け易く、膝を捻って、十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷を来すことがあります。これらが疑われる場合は、膝をハイブリッドシーネで固定します。ハイブリッドシーネは、支柱付き装具とシーネが合体したもので、自分で外してシャワーを浴びることも可能です。
膝以外では、五十肩や腱板炎による肩関節痛も多く見られます。使い過ぎなどの原因があれば腱板炎、原因がなければ五十肩と考えられます。高齢者では腱板断裂の可能性もあります。五十肩では入浴して温めながらの運動療法が有効です。
肩こり、腕や手のしびれ
頚、肩、腕、手、指にかけての神経は頚椎から出ています。従って、頚椎にヘルニアや変形性頚椎症などがあって、それらが神経を圧迫すると、頚(肩こり)から腕、手、指にかけてのしびれや痛みが出ます。頚椎を伸ばす動作(歯医者、理髪店、自転車など)で頚や腕の症状が悪化することが多く、肩こりの場所は、肩甲骨の内縁に沿っていることが殆どです。肩こりの場所としては膏肓(こうこう)のツボが有名で、「病(やまい)、膏肓に入る(いる)」とは、病がなかなか治らない様を言います。治療は、消炎鎮痛剤や神経の興奮を抑える薬(リリカ、タリージェ)の内服が有効です。
それに対して、親指、人差し指、中指の先がピリピリと痺れる場合は、手根管症候群を疑います。これは手首で神経が正中圧迫されて起るもので、手の使い過ぎによって起こります。薬や注射などで良くなりますが、手術が必要なこともあります。頚椎由来の症状との違いは、頚椎由来のものでは肩から腕、手、指にかけて痺れるのに対して、手根管症候群では肩や腕の症状はなく、指の症状しか出ません。
腕や手のしびれの原因としては、頚椎由来のものと、手根管症候群で9割を占めます。残りの1割は糖尿病、アルコール中毒、ギランバレー症候群などです。
それぞれに治療が異なるので、腕や手のしびれがある場合は、整形外科を受診して的確な診断を受けて下さい。
下肢痛のない腰痛
1)下肢痛のない腰痛について
下肢のしびれや疼痛(下肢の神経症状)の有無で、腰痛治療は大きく違います。下肢の神経症状のない腰痛は、筋筋膜性腰痛(筋肉疲労)、腰椎椎間関節炎、仙腸関節炎、軽度のヘルニア(大きいものは下肢痛を起こす)などを考えますが、そのどれかを特定することは、なかなか難しいことです。しかし、どのタイプの腰痛であっても治療は殆ど同じなので、患者さんは思い悩むことはありません。消炎鎮痛剤(ロキソニンなどの痛み止め)を4-5日飲めば治ります。痛みが強い時は、麻酔薬を注射すると効果的です(トリガーポイント注射)。
初期治療を逃し慢性化すると治療困難な慢性腰痛となるので、少しでも早めに痛みを和らげることが必要です。「クセになるから薬を飲まない。自力で根性で治す。」という方もたまにおられますが、痛いのを我慢して得することなど一つもありません。サプリ、整体、接骨、マッサージで治ったという方もおられますが、それはたまたま自然経過で治ったものと考えます(しなくても治っていた)。そういった施術で貴重な時間を失わないようにしてもらいたいものです。また、接骨院で保険証を使うのは違法行為ですから、注意して下さい。
私だったら、我慢せずにすぐにロキソニンかセレコックスを飲みます。「痛み止めは数時間しか効かないはずだから、一時的に効くだけ。また痛くなるはずだ。」というヘソ曲りな患者さんもおられますが、分かっていませんね。確かに薬には有効時間がありますが、その間に炎症反応を抑えるので、飲む前と比べると随分と楽になっているはずです。それを何回か繰り返すうちに(通常1日3回服用で1週間)炎症反応がなくなり治るという仕掛けです。もしそれでも治らない場合は炎症以外の原因が続いていると考え、他の治療に切り換えます。患者さんに分かりやすく「痛み止め」と言っているだけで、実際は「抗炎症剤」なのです。
炎症が治るから病気が治り、痛みも取れるということです。
ちなみに、いわゆる「ぎっくり腰」はまだ病態が分かっていません。急性腰痛症のなかで、特に「ぎっくり」して腰が痛くなるものをそう言うだけであって、他の急性腰痛症との違いは明確ではありません。
下肢の神経症状のない腰痛には、MRIは不要なばかりか、有害なことがあります。腰痛のない人100名にMRI検査をすると30名程度にヘルニア等の異常所見が見つかります。つまり、MRIでヘルニアがあっても、腰痛の原因がヘルニアであるとは限らないのです。こういう例に安易にヘルニアの手術をすると、「手術しても治らない」という、悲惨な結果になります。腰痛だけでは、どんなにMRIで異常があっても、手術にはならないのです。
下肢痛のある腰痛
2)下肢痛のある腰痛
1)で下肢痛のない腰痛について話しましたが、ここでは下肢痛のある腰痛のお話をします。今この文章を読んでいる方は、まさに「下肢痛のある腰痛」でお困りだと思います。でも安心して下さい、殆どの場合は治ります。
その前に、左の図を見て下さい。
脊椎から出る神経根(知覚神経と運動神経の両方が入っている)が支配する体の部位(デルマトームという)は決まっています。
驚くことに、人間以外の動物でも支配部位は同じです。
例えば、図のL5の場所(下腿外側)がしびれたり痛かったりすれば、L5の神経根が障害されていることになります。
L5神経根が障害される病気としては、第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板ヘルニアが考えられます(L4/5ヘルニア)。
同様に、ふくらはぎが痺れていれば、S1神経根が障害されていることになり、第5腰椎と第1仙椎の間の椎間板ヘルニア(L5/S1ヘルニア)を疑います。
このように、痺れたり痛い場所から、病変部位を推測することが可能です。
問診だけでも診断が付くので、MRIは必須という訳ではありません。
下肢痛のない腰痛は1週間で治ると言いましたが、下肢痛のある場合は1~2ヶ月の治療が必要です。
治療としては、消炎鎮痛剤の内服、リリカやタリージェ等の神経系に働く薬の内服、医療用麻薬(トラムセットなど)の短期間の内服、坐薬の使用などがあります。
「座れない、歩けない」などの強い症状があれば、硬膜外ブロックを4~5回行います。
腰痛、下肢痛のひどい人は、待合室で立って待っていることが多く(ヘルニアは座ると痛いので)、診察室に脚を引きずって入られることが多いです(優先的に先に診るようにしています)。
こういう例では、最初から硬膜外ブロックを行います。
これらの治療で、95%以上は治ります(症状が消える)。
但し、5%前後の方は手術になります。
では、どんな人が手術になるのでしょうか。
その前に、L5とS1の運動神経を考えてみましょう。
上の図(デルマトーム)でL5とS1の知覚領域(痛みやシビレを感じる場所)は理解していただけたと思います。
一方、L5とS1の運動は次のように覚えて下さい。
L5運動神経は足首を背屈させる(踵歩き、車のアクセルを緩める)。
S1運動神経は足首を底屈させる(つま先歩き、アクセルやブレーキを踏む)。
踵歩き、つま先歩きのどちらかが出来ないと、その神経がかなりの障害を受けていることになり、手術が必要になることが多いのです(軽い運動麻痺なら自然に治る人もいる)。
ですから、足が痺れている人は、必ず、踵歩きとつま先歩きが出来るか自分でチェックしておいて下さい。
運動麻痺(麻痺という言葉は知覚障害には使わない)を放置すると、跛行(びっこ)などの歩行障害が残りますし、右脚が障害された場合、車の運転が非常に危険になります。階段昇降も難しくなり、階段から転落する危険性もあります。
さて、治ると言っても、神経の炎症が治まって下肢痛や腰痛がなくなっただけで、元々の原因の椎間板ヘルニアが治る訳ではないので、再び神経がヘルニアで圧迫されて炎症を起こせば、症状が再発することになります(大きなヘルニアの場合は消えることもある)。
ですから、重いものを持つ時など、注意をしましょう。
肥満にも注意して下さい。
あぐらは避け、正坐を行って下さい。
また、痛い時に治療として腹筋、背筋などの筋トレをする人がいますが、却って悪化しますからやめて下さい。
筋トレは腰痛の予防であって治療にはならないので、筋トレは腰痛、下肢痛が治ってから行って下さい。
もっとも、治ったらしない人が殆どなのですが…。
年末に一気に文章を書いて疲れました。
次回は腰部脊柱管狭窄症について説明します。
お楽しみに。
下肢のむくみ
下肢のむくみの原因として、心不全、静脈瘤による循環障害や血栓症、リンパ浮腫、リリカや降圧剤(カルシウム拮抗剤)の副作用が考えられます。
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